私の場合、一人で工作機械メーカーと同じ仕事をしていると言っていいと思います。生技グループからこんな機械が作れないだろうかという依頼があったとき、それに合った機械を自分で設計し、自分で組み立てていくのが私の仕事だからです。最近の例では自動バリ取り・検査装置があります。生技グループからの依頼は「部品に開いた穴のバリ取りとピン指しが同時にできる機械がほしい」というものでしたが、かねてから温めていたワークを回転させて位置決めをするアイデアを使い、自分で設計しました。社内にある部品工作チームの力を借りて、機械に使う部品の加工をして、自分で組み立てたのです。
もちろん汎用性の高い機械は外から買いますが、そうでないものは私のような工機グループの人間が原則として一人で機械の設計から組立までおこないます。だから「一人工作機械メーカー」と言えるわけです。さっきの機械では、私が作った機械によって工程を1ステーション分減らすことができたため、かなりのコストダウンが実現できました。ただ、相手が社内であるために要求がきびしく、遠慮がないことだけは言っておきましょう。同じ会社の仲間だから遠慮なくきびしい要求をしてくるわけで、それに応えていくことはなかなか大変ですが、ただし、そうした苦労も、自分が考えて作った機械が実際に現場で動いているのを見る喜びに比べたら小さなものです。